2015年09月14日

雨の日曜日の儀式(セレモニー)

雨の日曜日の儀式(セレモニー)


雨の日曜日の儀式


日曜日、朝から雨が降っていると
子供の頃好きだった、素敵な時間のことを思い出す。

どこにも出かけずに家でゆっくり過ごすことになると
父はよくサイフォンでコーヒーを淹れた。

儀式の下ごしらえは、ミル挽きから。
豆を挽くのが、僕に与えられた役目。
大きなハンドルのミルを挽かせてもらえるのが嬉しかった。

「ガリッ」
そして、立ち上る香ばしい薫り。
飲めないけれど、その薫りが大好きだった。

父がマッチを擦ってアルコールランプに火を点ける。

儀式の始まりだ。

ユラユラと光るオレンジ色の炎が幻想的だ。

沸騰した熱湯は気泡とともに粉の入ったフラスコに吸い上げられていく
ひとしきり粉を躍らせると、ゴボゴボと音を立てて下のフラスコにコーヒーとなって落ちる。
僕は、その一部始終をじっと眺めていた。
上のフラスコに残された粉は、月の表面に見えた。
カップに少しだけコーヒーを入れてもらい、苦さに顔をしかめる。

これが「雨の日曜日の儀式(セレモニー)」

儀式のBGMはたいていジャズ。
オーディオマニアでレコードコレクターでもあった父が
ジャズを好んでかけていたからだった。

ボーカル、ピアノ、サックス、トランペット…

数あるジャズチューンの中で
僕の胸にとりわけ響いたのが
ビル・エヴァンス・トリオの "Waltz for Debby"

ゆっくりと始まるピアノのメロディーは
雨だれが奏でているように感じた。
どこかメランコリックだけれど、
僕はこの曲がいちばん好きだった。

大人になった今も、日曜日の朝、雨が降っていると
"Waltz for Debby" が聴こえてくる…
そして、無性にコーヒーの薫りが欲しくなる…

「雨の日曜日の儀式」は今も続いている。

祭主は父ではなく僕…
サイフォンではなくドリップ…
そして、苦さに顔をしかめるのは娘たちになったけれど…

雨の日曜日、朝から雨で憂鬱になったなら
コーヒーを淹れてみてはいかが?
"Waltz for Debby" をBGMに…






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Posted by カフェマスター、ヤス at 14:05│Comments(0)お気に入り
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